〈離乳食に必要な栄養〉食物アレルギーの注意点 卵・小麦・乳製品 初めての「ひと口」の方法

離乳食ではどんな栄養を補う必要があるのでしょうか? その栄養が赤ちゃんの成長にどうかかわるのかについて紹介します。また「食物アレルギー」の基本、「初めてのひと口」の食べさせ方、気になる食材の始める時期と始め方について、書籍『まねしてラクラク迷わない! 365日のフリージング離乳食』著者で管理栄養士の川口由美子さんに解説していただきました。



赤ちゃんの成長・発達にかかわる 離乳食に必要な栄養のこと 離乳食ではどんな栄養を補う必要があるのでしょうか? その栄養が赤ちゃんの成長にどうかかわるのかも紹介します。


離乳食の栄養バランス

▼いつからどう考える? 離乳中期ごろから、栄養バランスを考えよう 離乳初期(5~6カ月ごろ)はまだ、食べる量や栄養は気にしなくてOK。 1日2回の食事に慣れてくる離乳中期(7~8カ月ごろ)から栄養バランスを考えましょう。 1回の離乳食ごとに、炭水化物、たんぱく質、ビタミン・ミネラルを含む食材を取り入れますが、1回の食事でとりきれなくても大丈夫。 1週間単位でそれぞれの栄養素がまんべんなくとれるように調整できるとよいでしょう。 いろいろな食材を使い、彩りのいいメニューを心がけると栄養バランスが整いやすくなります。


離乳時期に大切な3つの栄養素

▼エネルギーとなる栄養炭水化物 おもに脳や体、内臓を動かすエネルギー源となる栄養素。糖質と食物繊維に分けられます。 ごはんやパン、めん類、じゃがいもなどのいも類といった主食となる食品に多く含まれます。


▼体の調子を整える栄養ビタミン・ミネラル 体の発育や健康の維持に欠かせない栄養素。ほかの栄養素の吸収を助けたり、免疫機能や新陳代謝を促します。 さまざまな種類があり、野菜や果物など副菜となる食品に多く含まれます。


▼体をつくっていく栄養たんぱく質 体をつくる材料や、免疫抗体や酵素の原料になる栄養素。アミノ酸という栄養素から構成されています。 魚介類、肉類、卵、大豆製品、乳製品など、主菜となる食品に多く含まれます。


離乳食に不足しがちな栄養素

▼不足しやすいのは? 意識して与えたい鉄、亜鉛、カルシウム おなかの中で赤ちゃんがママからもらった鉄(貯蔵鉄)は、生後6カ月ごろには少なくなってしまいます。 また、成長ホルモンの分泌や細胞の代謝などにかかわる亜鉛は、日本人が不足しやすい栄養素。 カルシウム、カルシウムの吸収に必要なビタミンDも赤ちゃんの歯や骨をつくるのにたくさん必要。それぞれ、意識して離乳食に取り入れましょう。 特に妊娠22週以降37週未満で生まれた早産児は貯蔵鉄が少ないので、さらに必要度が高くなります。

▼何で補給したらいい? 多く含む食材やベビーフードを利用しよう 鉄を多く含む食材は赤身魚、赤身肉、卵黄、粉ミルク。 母乳には鉄がほとんど含まれていないので、鉄は早い時期から積極的に取り入れましょう。 また、亜鉛は鉄の多い食材に多く、カルシウムは乳製品や小魚に多く含まれます。鉄やカルシウムを強化したベビーフードなどで手軽に補給するのもおすすめです。

▼ビタミン・ミネラルの補給は? いろいろな食材を取り入れよう ビタミン・ミネラルは、食べ物の中に微量に含まれる栄養素。 ビタミンは13種類、主要なミネラルは16種類と、体に必要な種類もさまざまあります。 でも、あまりこまかく考えず、いろいろな野菜や果物をまんべんなく使うことを心がけるといいでしょう。さまざまな種類のビタミン・ミネラルをバランスよくとることができます


吸収されにくい「非ヘム鉄」の吸収をUPする調理法 動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に 肉や魚に含まれるヘム鉄は体に吸収されやすく、野菜などに含まれる非ヘム鉄は吸収されにくい特徴があります。 非ヘム鉄の食材を使うときは、ヘム鉄を含む動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に調理すると、吸収率がアップします。


非ヘム鉄を含む食材は、動物性たんぱく質+鉄を含む粉ミルクを使ってミルク煮にしたり、ビタミンCが豊富なさつまいも、じゃがいもなどと一緒にすると吸収力がアップします。 本稿は[『まねしてラクラク迷わない! 365日のフリージング離乳食』](西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。



正しい情報を知っておいて 食物アレルギーについて 「離乳食を食べさせてアレルギー症状が出たらどうしよう」と心配するママ・パパは多いもの。 でもむやみに怖がらないで。正しい知識を持っておきましょう。


「食物アレルギー」の基本

▼食物アレルギーって何? 免疫機能が食べ物に過敏に反応して起こる 食べたり触れたりした食べ物により、じんましんや湿疹、下痢、せきなどの症状が現れます。 赤ちゃんは消化機能や免疫反応を調整する機能が未熟なため、食べ物を「異物」と判断することがあり、免疫機能が過敏に反応して起こります。 赤ちゃんの場合、アレルギーを起こしやすいのは卵、牛乳、小麦で、全体の70%を占めます。

▼発症したら? 体の成長とともに食べられるようになることもある 食物アレルギーは1才未満の赤ちゃんに多い病気で、乳幼児の5~10%が発症しているというデータがあります。 消化機能や免疫機能が発達するとともに、アレルギーの原因となる食材も少しずつ食べられるようになることもありますが、アレルギー専門医の指導のもと、服薬や適切な食事制限できちんと治療をすることが大前提です。

▼症状は? 皮膚症状や嘔吐など症状はさまざま 食物アレルギーの症状はさまざまです。嘔吐や下痢のほか、せきなどの呼吸器症状として出ることもありますし、皮膚のかゆみや腫れなどの症状が出ることもあります。 いずれにしても、離乳食を食べさせたあと、普段と違う様子が見られる、特定の食べ物を食べると何らかの症状が出るということがあれば、早めにアレルギー専門医に相談しましょう。



「食物アレルギー」大事なこと4

①食べる時期を遅らせない 「心配だから食べる時期を遅らせる」ことに予防効果はありません。 むしろ目安の時期から少しずつ食べさせて慣らしたほうがアレルギーを発症しにくいことがわかっています。

②初めての食材はごく少量に 食物アレルギーの症状は、食べる量が多いほど強く出る傾向があるといわれます。 初めての食材はごく少量から慎重に始めれば、もし症状が出ても不安なく対処できます。

③皮膚の保湿をしっかり 肌が荒れていると皮膚からアレルギーの原因物質が侵入し、免疫機能に影響を及ぼすことがわかってきています。 食事の前に口のまわりを保湿しましょう。かぶれ予防にも効果的です。

④心配なときは医師に相談 「湿疹などのアレルギー症状があって離乳食を始めるのが不安」「食べさせたら皮膚が赤くなった」など心配なことがあったら、自己判断をせずに、かかりつけ医に相談しましょう。 本稿は[『まねしてラクラク迷わない! 365日のフリージング離乳食』](西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

「初めてのひと口」の食べさせ方 初めての食材を与えるときのポイント

▼少量から始める

▼赤ちゃんの体調のいいときに

▼受診できる時間帯に 少量の目安は小さじ1。卵は1さじより少なめだと安心です。

▼OK
食べさせたあと、赤ちゃんの体調に変化がない 体調に変化がなく、赤ちゃんの様子に問題がなければ次回から少しずつ量を増やします。

▼受診
食べさせたあと、顔や体に赤みが出た 食べさせたあと、嘔吐や下痢をした 何を食べさせてどんな症状が出たかを医師に伝えます。症状を写真に撮っておくとよいでしょう。 気になる食材の始める時期と始め方

▼卵
始める時期の目安 卵黄を6カ月ごろから(全卵は7~8カ月ごろから) 初めのひと口 かたゆで卵黄 食べさせ方 卵黄は卵白に比べてアレルギーの原因(アレルゲン※)になりにくいため、卵黄から始めます。 水に卵を入れ、沸騰してから20分ゆで、中までしっかり火を通した「かたゆで卵」の卵黄から少量をすくい、湯冷ましでのばします。 ※アレルゲンとは、アレルギー反応を引き起こす原因となる物質のこと。アレルギー抗原ともいいます。

▼小麦・小麦製品
始める時期の目安 5~6カ月ごろから 初めのひと口 ゆでうどん 食べさせ方 食パンには卵や牛乳も含まれているので、うどんがおすすめ。コシのある乾めんよりもやわらかいゆでうどんがいいでしょう。 ゆでうどんをさらに熱湯でゆでてつぶし、湯冷ましでのばしてペースト状にします。

▼牛乳・乳製品 始める時期の目安 7~8カ月ごろから 初めのひと口 プレーンヨーグルト 食べさせ方 粉ミルクでアレルギー症状が出ていない場合は、牛乳・乳製品のアレルギーの心配はまずありません。 離乳食開始まで完全母乳の場合、まれに牛乳でアレルギー症状が出ることも。心配であればヨーグルトを少量から始めます

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なお、本稿は書籍[『まねしてラクラク迷わない! 365日のフリージング離乳食』](西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。赤ちゃんのお世話って本当に大変です。時間も人手も睡眠もたりない! 離乳食が始まると、さらに大変。だから、無理はしないで少しでも負担を減らしてほしい…。本書は離乳食開始から完了までの毎日のレシピ案を紹介しています。1週間分をまとめて作って冷凍しておくことで、毎日の負担がぐんと減ります。最新「授乳・離乳の支援ガイド」に対応。離乳時期別「この食材いつからOK?」チェック表付き。かんたん&時短な離乳食作りを豊富な写真とともに、やさしく丁寧に解説しています。